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薬業界 老舗歴史シリーズ 6

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~ 参天製薬 ~

薬の業界における長い歴史を持つ老舗とも言える会社、伝統あふれる会社にまつわるコレクションを紹介する老舗歴史シリーズのその六、今回ご紹介するのは『参天製薬』です。
過去にこのシリーズでご紹介した資生堂は前身が薬局でしたが、今回の『参天製薬』もスタートは明治23年(1890年)に創業者の田口謙吉翁が大阪北浜に開業した藥舖「田口参天堂」がその始まりです。

「参天」という商号の由来は儒教の経典四書の中庸に書かれている“天地の化育を賛く可ければ、即ち以って天地と参となる可し”(:本来聖人は万物の秩序と原理〈天〉と人間社会〈地〉の調和を助ける)から名付けられたものです。
そして“天機に参与する。つまり“眼をはじめとする特定の専門分野に努力を傾注し、それによって参天ならではの知恵と組織的能力を培い、患者さんと患者さんを愛する人たちを中心として社会への寄与を行うことを企業理念としています。
この企業理念にあるように同社の主力製品は点眼剤ですが、本項ではかつて「参天」が販売していた目薬以外の製品を主に取り上げて御紹介したいと思います。

大學目薬 その前に「薬と歴史シリーズNo.10~18では目薬の変遷と題して江戸期から近代に至るまでの目薬の発展について連載しましたが、その中で明治30年(1897年)に同社より発売された今日の新薬的目薬の嚆矢(こうし)、かつ目薬容器の発展史の上でも画期的とも言える『大學目薬』について一部再掲、加筆して取り上げてみたいと思います。
『大學目薬』発売の前には「精金竒水」を初めとする薬液に差し入れたガラス管の上端口にあてた人差し指を単純に開閉して滴下する方式の目薬がありましたが、『大學目薬』はその点眼容器を改良した目薬です。(初期には『大學目薬』も単純にガラス管で点眼していたようです。)

またその処方内容は帝国医科大学付属病院の汎用処方を参考に硫酸亜鉛、硼酸(ホウ酸)他10成分の配合からなる目薬で、『大學目薬』の販売にあたっては前記「精金竒水」がヘボン博士(ヘップバーン博士)を全面に押し出したように、当時ドイツより招聘され東京大学医学部において教鞭・診察にあった大家、医学の最高権威の象徴ともいえるベルツ博士(:化粧水のベルツ水を処方し一般に広めたので一般の方々もベルツの名はご存じかと思います。)を取り上げ、その肖像のイメージを図案化した商標で売り出しました。 (“博士マークの大学目薬…帝国大学病院にて汎用せられる貴重な製薬なり…”明治33年の新聞広告より)

『大學目薬』は価格的には高価だったようですが、非常によく売れ昭和14年当時の家庭薬の生産高統計ではトップの「わかもと」に次いで『大學目薬』が二位だったようです。
そして戦後には目薬の製品構成を「サンテ・ド・ウ」「サンテU」「サンテピオ」「サンテソフト」「ジュニアサンテ」など適応症に応じて拡大しました。 このように『参天製薬』は一般用目薬でロート製薬に次いでシェアーの2位にランクされますが、同社は医科向けの眼科用製剤にも力を入れており現在ではそのシェアーは一位の4割を占めており、医科向けの眼科用製剤は同社の売上の80%を占めるに至っています。

このように『参天製薬』というと目薬のメーカーというイメージがありますが、目薬以外にも医療用抗リウマチ薬「リマチル」も販売しており、現在ではあまり知られていませんが、かつて創業当 初「田口参天堂」から大正14年(1925年)に設立された参天堂株式会社にかけての参天では『大學目薬』以外にもこれからご紹介するような『ヘブリン丸』『健通丸』『参天セキ薬』『頭痛タミン』『腹痛タミン』などの様々な売薬も製造、販売していました。

ではこれら薬と関連の資料をご覧下さい。

○『ヘブリン丸』
:創業当時の主力製品です。その当時発見されたばかりの西洋の新薬を配合した風邪薬で効き目絶大で大ヒットしたようですが、翌年には全国で同名の商品が出回ったとのことです。 効能は“かぜねつ一切 はやりかぜ づゝう りうまちす”ですが、容量によって袋状の製品、薄い箱状の製品、丸い箱状の製品、四角い正方形の箱状の製品など複数が確認出来ます。

《製品1》
ヘブリン丸
《製品2》
ヘブリン丸
《製品3》
ヘブリン丸
《看板》
ヘブリン丸
《製品4》
ヘブリン丸  ヘブリン丸
《製品5》
ヘブリン丸

『ヘブリン丸』特売お知らせ
大正10年
ヘブリン丸
大正11年A
ヘブリン丸
大正11年A
ヘブリン丸
昭和10年
ヘブリン丸

○『健通丸』
:羽の生えた天女のマークのいかにも明治の欧米の文明開化を感じさせる高級下剤ですが、大黄末、牽牛子末、甘草末などの生薬成分からなる丸剤です。効能は“大便秘結、消化不良、腹中雷鳴、溜飲、肩の凝、肚腹膨満(はらはり)、惡心(むかつき)、口中加答兒(くちのあれ)、痔疾、頭痛、耳鳴、水腫”など多彩でした。

《製品1》
健通丸
《製品2》
健通丸
《看板》
健通丸
《『健通丸』封筒》
健通丸

○『参天セキ薬』
:登録商標のベルツ博士像の入った麻黄、款冬花、安息香酸などを含んだ“痰、咳、感冒咳、百日咳…”に効果のある咳止めです。

《製品1》
参天セキ薬
《『参天セキ薬』特売お知らせ》
参天セキ薬
《看板》
参天セキ薬
《おまけクレヨンスケッチ》
参天セキ薬

○『頭痛タミン』
:アセトアニリド、カフェインからなる“頭痛、頭重、歯痛、耳痛、神経痛、リウマチス、肩凝…”に効き目のある鎮痛剤です。

《製品1》
頭痛タミン
《製品2》
頭痛タミン

○『腹痛タミン』
:黄柏、ロートエキス、延命草、タルク、デキストリンナどからなる“腹痛、胃痛、急性胃カタル、胃けいれん、食あたり、嘔吐、つわり…”に効き目のある腹痛鎮静薬です。

《製品1》
腹痛タミン
《製品2》
腹痛タミン

○“玩具提供 参天堂”
玩具提供 参天堂

○“革命的結核治療薬『サンテ』の服用者へのダイレクトメール”
:同社が結核治療薬も販売していたことがわかります。

『サンテ』の服用者へのダイレクトメール



〔参考文献〕
・『日本の伝統薬』        宗田 一     (主婦の友社)
・『大學目薬千一夜物語』     参天製薬ひとみ会
・参天製薬HP
・Wikipedia「参天製薬」
・『江戸病草紙』         立川 昭二 (ちくま学芸文庫)
・『日本人の病歴』        立川 昭二 (中公新書)
・『日本科学の先駆者 高峰讓吉』  山嶋 哲盛 (岩波ジュニア文庫)
・『絵で読む 江戸の病と養生』   酒井 シズ (講談社)
・『江戸の生薬屋』        吉岡 信  (青蛙房)
・『薬文化往来』         天野 宏  (青蛙房)
・『江戸の妙薬』         鈴木 昶  (岩崎美術社)
・『伝承薬の事典』        鈴木 昶  (東京堂出版)
・『日本の名藥』         山崎 光夫 (東洋経済新報社)
・『ガラスびん覚書 精金竒水』  庄司 太一 (第二回横浜骨董ワールド ガイドブック)
・『点眼薬の使い方・点眼薬の歴史』河嶋 洋一 (月刊眼科診療プラクティス)
・『点眼薬の選び方と使い方』   中村 聡  (南江堂)
・『点眼剤 その作り方と応用』  宮崎 順一 (南山堂)


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