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ジェネリック(GE)篇(その12)

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~ ジェネリック(GE)篇(その12) 「神薬」 ~


  • 今回の売薬紹介シリーズは『神薬』です。
    例えば金匱要略には脳卒中に使う「還魂湯」「続命湯」があり、外台秘要には喘息に用いる「神秘湯」があり、最近ではアレルギーに使う「アレギサール(去る)」があり、今も昔も薬の効き目にはその名前が影響すること大なること、薬の命名には随分と工夫が見られます。

  • 今回の薬はその名も『神薬』です。その大本の製造メーカーは○○資生堂です。 資生堂は現在では花椿のマークで化粧品メーカーとして有名ですが、元々は明治5年(1872年)に元海軍病院薬局長であった福原有信他二名が三精舎を興し、資生堂という洋風調剤薬局“資生堂薬局”(:資生とは易経より採った言葉。)を銀座に開業したのが始まりとされているようですが、その時点ですでに2つの資生堂があり、その後明治中期には東京には本町資生堂、室町資生堂、邑田資生堂などの資生堂がありその他全国には数多くの資生堂があったようです。
    結局元祖福原資生堂を含めた資生堂に勤務した薬剤師たちがのれん分けをするように○○資生堂を名乗り、そこで洋薬の申し子のように売られていたのがこの『神薬』のようです。

  • 現在では福原資生堂の流れを汲む資生堂のうち邑田資生堂のみが生き残り製造しているようですが、その成分の創製は順天堂大学(医院)創始者の大博士従五位佐藤尚中と伝えられ、当初の効能は“霍乱、胸痛、腹痛、食傷、下痢、痛風、破傷風、咳嗽、水あたり、船酔い、頭痛、歯痛、虫歯、麻疹などにも有効な万能薬、まさに神薬でした。
    特に個人的にはボトルが綺麗で神秘的なコバルトブルーな点がいかにも明治期に作られた薬という雰囲気をかもし出していると思います。

  • コレクションの初めは邑田資生堂のものと思われる明治期の納書です。
    (1)(邑田)資生堂納書
    (邑田)資生堂納書

  • つぎはそれよりも古いと思われる紀元2533年・明治6年(1873年)の年号の入った他の商品を含めた資生堂の商品案内です。
    明治6年ということは資生堂薬局開業の明治5年の翌年ということになります。
    資生堂の商品案内

  • つぎは紀元2538年・明治11年(1878年)の年号の入った納書で、これは福原資生堂の流れとは別の『神薬』のものと思われます。
    (2)明治堂『神薬』納書
    明治堂『神薬』納書

  • つぎのコレクションは邑田資生堂の『神薬』のバッケージとその納書です。
    邑田資生堂『神薬』
    邑田資生堂『神薬』
    (3)

  • つぎは骨董市で手にいれた同じく邑田資生堂の『神薬』で、パッケージは次の『神薬』とほとんど同じですが価格は¥100- です。 そして¥1000- の『神薬』には書かれていない成分としてクロロホルム、エーテル、エタノールなどが成分として含まれており、¥100- という価格から昭和30年代頃の製品かと思われます。
    邑田資生堂『神薬』 (4)

  • つぎは近年入手した実際販売されていた邑田資生堂の『神薬』で(4)の『神薬』とほとんど同じパッケージですが、価格は¥1000- です。
    邑田資生堂『神薬』 (5)

  • つぎは福原資生堂の流れをくむと思われる新田資生堂の『神薬』です。
    納書には“・・・本剤は神薬の初祖にて本統のものなれば・・・”と書かれてあります。 また納書は日本語以外に英語、中国語で書かれており、価格も考慮に入れますと昭和初期の『神薬』と思われます。
    新田資生堂『神薬』 (6)

  • つぎはやはり中田資生堂の流れをくむと思われる中田資生堂の『神薬』です。
    中田資生堂『神薬』 (7)

  • 以下の『神薬』は上記の福原資生堂の流れ以外のいわば『神薬』の後発品、GE『神薬』です。
    これらを見てもブランド名としての『神薬』の名前は根強いものであったことが伺えます。
    『みずほ印 神薬』
    (8)『みずほ印 神薬』
    『つばめ印 神薬』
    (9)『つばめ印 神薬』
    『神薬』
    (10)『神薬』

    『神薬』
    (11)『神薬』
    『昭和 神薬』
    (12)『昭和 神薬』
    『神薬』
    (13)『神薬』

    『トヤマ 神薬』
    (14)『トヤマ 神薬』
    『模範 神薬』
    (15)『模範 神薬』
    『神薬』
    (16)『神薬』
    『保壽 神薬』
    (17)『保壽 神薬』

    『神薬』外袋
    (18)明治期の『神薬』の外袋
    『仙翁 神薬』納書
    (19)明治期の『仙翁 神薬』の納書



〔参考文献〕
・町田 忍 「仁丹は、ナゼ苦い?」 ボランティア情報ネットワーク


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