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今は昔 売薬歴史シリーズ 13

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~ 救心 ~


今も根強く人気の続く伝統薬の“今と昔の姿とその良さ”を伝える伝統薬シリーズ13回目、今回は『救心』を御紹介いたします。


◎『救心』 = 〖救心〗

  • 前回の“今は昔売薬歴史シリーズ”では『龍角散』を取り上げましたが、今回御紹介する『救心』は『龍角散』以上にそのパッケージに大きな変化のない伝統をかたくなに守り続けている、また別の見方をすれば改良の余地の無い程にまでに完成した商品であるともいえる伝統薬です。

  • このくすりコレクション紹介するシリーズは今回で91回目となりますが、約5年前の第30回では『六神丸』を御紹介しました。
    『六神丸』の詳細はそちらをご覧いただきたいと思いますが、この『六神丸』こそが今回登場の『救心』のルーツ、先祖ともいえる薬です。

  • 『救心』創業者の堀正由翁はもともとは多くの富山の配置販売業者とおなじ置き薬屋さんで、大正2年(1913年)に堀家に伝わる中国の『六神丸』をルーツにもつ「ひとつぶ(一粒)ぐすり」を携えて富山から上京、浅草に堀博愛薬房を設立、『ホリ六神丸』として販売を始めました。

  • 堀正由翁はもちろん『六神丸』の万能薬的な効き目には確信をいだいておりましたが、翁が考えたのは現在でも富山や奈良の配置売薬を含めますと100種類(社)にも及ぶといわれている多くの同業者とおなじような商いをしても大きな発展は望めそうにないことでした。
    そこで配置売薬の経験から『六神丸』の万能薬的な効き目のなかでも特に心臓に良く効くという点に着目し、心臓病に的をしぼり処方や丸剤の大きさなどの改良を行い、またその効果や適応を明確にあらわす『救心』という商品名を創案しました。
    そして商号も『救心製薬』に改め販売方法も新聞や雑誌の広告などを活用し、配置売薬から通信販売へと大転換しました。
    この転身は大成功し『救心』の売り上げはアップ、さらには問屋を介して個々の薬局・薬店で販売する方法に再転換、さらにはその効果を裏付ける麝香や牛黄、蟾酥などの動物生薬の科学的な成分研究も国内外で積極的に推進し、それが現在まで続いているわけです。
    つまり『救心』とは伝統と経験に基づき、そして科学的裏付けを探求し続けて100年の長きにわたり心臓を守り続けてきた伝統薬といえそうです。

  • では『救心』コレクションをご覧下さい。

《戦前の『救心』と効能書》
:東京市とあることから戦前の製品ですが、“救心本舗 堀博愛藥房”製造となっています。
 価格三圓五拾銭の桐箱入り『救心』は立派なものです。また効能書も写真入りの重々しいものです。
 そこに書かれている効能は“心臓病・肋膜炎・肺病・盗汗・脚気・神経痛・胃病・小児五疳・急病気付・下痢・感冒”ですが、
 一方現代の〖救心〗のそれは“どうき、息切れ、気つけ”の症状のみの効能となっています。
『救心』

『救心』

《『救心』パンフレット》
:昭和15年(1940年)印刷の小冊子で中には救心本舗の写真などが印刷されています。
『救心』パンフレット

『救心』パンフレット

《薬局経営日記 昭和29年版 より『救心』広告》
『救心』広告

現代製品
『救心』現代製品




〔参考文献〕
・日本の名薬     山崎 光夫   東洋経済新聞社
・日本の伝統薬    宗田 一    主婦の友社
・インターネット   フリー百科事典『ウィキペディア Wikipedia』
・インターネット   株式会社龍角散 HP
・インターネット   伝統薬ロングセラー物語

〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局 荻野 祥子 先生


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