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昔はこんな薬もありました 7

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~ 変わった医療用具 ~


このシリーズもすでに7回目を数えるわけですが、今回は薬ではなく医療用具で変わったものを御紹介したいと思います。



1. 『ハクキン眼爐(がんろ)』(めあたため)

  • 最近は“ホ○ロ○”に代表される使い捨てカイロが全盛で、貼り付けるものや座布団タイプのもの、巾着タイプのものから靴の内敷き(なかじき)まで様々ありますが、発売当初は“ホ○ロ○”がなぜ発熱するのか? の談義が盛んで、振ったとき成分が混ざって発熱するのではという答えから振ったときの摩擦熱だという怪答までいろいろありました。
    もともとは釣趣味の太公望用に発明された“ホ○ロ○”が大衆に広まる一昔前までは懐炉(かいろ)というと懐炉灰を用いた懐炉か、ベンジンを用いた懐炉が主流でした。
    後者のベンジンを用いた懐炉の代表がハクキンカイロで、大正12年(1923年)に創業の矢満登商会が製造していました。昭和37年には南極観測隊がハクキンカイロを携行、昭和38年には社名をその名もズバリの“株式会社ハクキン”へと変更しましたが、このハクキンとは白金のことで白金属(周期律表第八属に属する貴金属でイリジウム、白金など)の触媒作用による酸化反応原理を利用した発熱器を使った懐炉ということです。(;難しい)
    この“株式会社ハクキン”は現在も大阪で健在でハクキンカイロ(:使い捨てカイロと比べて原料を浪費せず、ゴミの発生も少なく最近見直されている。)の改良品をはじめ、使い捨てカイロ、入浴剤、サポータなどのボディケア製品、のど飴、サプリキャンディ、使い捨てカイロを数回に分けて使える収納袋や深層水まで手広く業績を拡張されていますが、同社のホームページにも紹介されていない珍品がこの『ハクキン眼爐(がんろ)』(めあたため)です。
    この『ハクキン眼爐(がんろ)』とは眼帯と懐炉をドッキングさせた、いわば暖かい眼帯、火のついた懐炉を眼帯のように目に当てる製品です。価格は換火口や湿布口も揃って一圓です。(戦前の商品ということです。)
    温罨法といって患部を温めて治癒を促進する治療法がありますが、この『ハクキン眼爐』もその一種のようで、それまでのお湯で絞ったタオルで患部を温める温罨法などと比べて次のような利点が強調されています。
     ※火の側で土鍋と首引きで温める面倒がない。
     ※罨法しながらも用事も出来る道も歩ける。
    『ハクキン眼爐(がんろ)』は注油の量によっては効果が30分以上4~5時間も持続します。
    角膜炎、結膜炎、麦粒腫や緑内障まで広範な眼科疾患に有効なことは専門大家が推奨しておりますが、けったいな見て呉れ(外見)はともかく火のついた懐炉を目に当てる緊張から眼のことは忘れる。ゆえに早く治ってしまうのではとも考察しましたが同社のホームページでも一切触れられていないことからあまり売れなかったのではとも推察する次第です。
    ハクキン眼爐 ハクキン眼爐
    オマケとして戦前のハクキンカイロ(一圓五十銭)とその使用説明書もご覧下さい。
    この説明書には『ハクキン眼爐(がんろ)』の宣伝も印刷されており、“眼病者喜べ!眼爐療法”と書かれております。
    ハクキン眼爐 ハクキン眼爐
    ハクキン眼爐
    ハクキン眼爐


2. 『オゾンパイプ』

  • オゾンというものがあります。酸素分子 O が3つ2等辺三角形を作った形をしており、そのうちの酸素分子 O 一つを他の物質に与えて普通に空気中にある酸素分子 O2 になろうとする性質があるためオゾンは強い酸化作用を持っています。
    オゾンは殺菌・消毒・脱臭・脱色などの作用があるため食品の殺菌、鮮度保持や下水道・プール・浴場などの殺菌や脱色、有機物の低減、室内空気・医療機器・食器などの殺菌などに応用されています。
    それ以外にもオゾンには医療効果があると言われ、かつては日本人特に多くの前途ある青年たちの命を奪った結核・労咳(ろうがい)の治療方法に気候良く空気の新鮮な土地に引っ越して病を治す転地療法というものがありました。
    この空気の新鮮な土地、海岸や山にはオゾンが多く発生しておりオゾン O3 が酸素分子 O2 と酸素原子 O にイオン化する状態が多いため、また酸素原子 O 自体も活性の強いマイナス・イオンであるため、海岸や山にはマイナス・イオンが豊富で多量のそれらが健康に大変良い影響、リフレッシュ効果を与えていると考えられており転地療法にはうなずける点があると言えます。
    そのような観点から最近は転地療法に限らず癌を引き起こす活性酸素を減らす作用まであるマイナス・イオンを積極的に取り入れる健康法、オゾン健康法が盛んで1996年には日本医療オゾン研究会が発足、現代では家庭用オゾン発生器(;放電、電気分解、紫外線ランプ法などによる。)も発売されています。
    またオゾンは放電や電気分解法によって得られたオゾンガスを水に溶解してオゾン水として半導体や野菜、医療機器の消毒、手洗いに利用されていますが、このようにオゾンはきわめて有用である一方、人体に対しては危険性もあります。
    つまり人がオゾンを含有した空気を吸引することで鼻腔・喉・気管・肺などへオゾンが接触し表面を酸化する結果、臭気・刺激・咳・頭痛・眠気・胸部圧迫感などを招き、さらには肺水腫となり生命の危険性を招きます。(オゾンの作業環境における許容濃度は0.1ppmで、人がオゾンの臭気を感ずるのは0.02ppm程度からです。)
    また高濃度のオゾンは不純物が含まれている場合にはオゾン同士が反応して酸素になるため、オゾンは保存が困難で、また濃いオゾンは反応が連鎖的に起こって爆発する危険性があります。
    前書きが長くなりましたが、ここにご紹介するのは大阪の蜆橋のオゾン商會が販売していたオゾン液をパイプで吸う健康器具『オゾンパイプ』と類似の同じく大阪のオリエンタルオゾン商會が販売していた『オゾンパイプ』です。
    オゾンパイプ オゾンパイプ
    蜆橋の『オゾン液』の箱書きには何故か仰々しくローマ字で次のように書かれております。

    “Hon-zai wa Kyouretu naru Sanka,Sakkinryoku o yusi sono tikara wa
     sanso no 3.000 bai ni sotosu”

     (訳:本剤は強烈なる酸化、殺菌力を有し、その力は酸素の3000倍に相当す。)

    箱には“オゾンの偉大なる霊作用は世界医学界公認する處なり”“貴重なるオゾンの吸入が出来又喫煙の代用なり 一挙両得”とあり昭和6年(1931年)4月11日の読売新聞の広告には喫煙代用・経費節約・健康保全・空気消毒とあります。
    上記のオゾンの人体に対する危険性を考えますとオゾン水をパイプで吸って肺水腫にならずよく無事だった、ましてや喫煙代用ということで間違って火をつけた粗忽者もいたろうによく爆発しなかったものだと思いますが、保存が困難なオゾンが本当に入っていたのか??? 健康器具とはそんなものかも知れません。
    オゾンパイプ
    オゾンパイプ オゾンパイプ
    オゾンパイプ


《付録》

  • 付録として江戸期の健康器具のチラシをご紹介します。
    現物が無いため一体どんなものであったのか挿絵図から想像するしかありませんが、解読できる方、資料をお持ちの方は御教授をお願い致します。
    江戸期の健康器具


( 参考文献 )
  ・嘘八百 これでもか!!!! 文春文庫  天野 祐吉


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