ホーム新撰組と薬剤師 石田散薬プロジェクト

石田散薬の研究 ~ステップ2 古式にのっとった製造法の理解と準備~

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~日付と場所~

原材料となる牛額草の採集では、「日付」と「場所」が大事です。 口伝によれば、土用の丑の日」に、村中総出で「浅川」の牛額草を刈り取ったそうです。(原書には、採取に関しての記述はありません)
江戸後期の「土用の丑の日」と明治以降の「土用の丑の日」は異なる、ということは太陽暦(日本では明治5年12月から)と太陰暦(江戸時代の日本では太陰太陽暦。19年に7度、閏月を作って調整)の関係からも明らかです。 しかし昭和初期まで「土用の丑の日」を基準として石田散薬が製造されていたことを考えると、この「土用の丑の日」という基準は収穫時期の「目安」であると考えるのが妥当です。

当時の農家の仕事がひと段落する頃合いが、「土用の丑の日」近辺であることからも、これはいわば「村の名士(土方家は地元ではお大尽様と言われていました)主催の、特別なお祭りの日」という意味合いが強かったのではないかと考えられます。 川で採集する以上、水位・天候にも左右され、ひどい台風の時では収穫そのものが危険ですから、「必ず土用の丑の日でなければならない」ということもなかったと思われます。

しかし、そこで浪漫を追うのが研究の醍醐味ということで、当プロジェクトでは「土用の丑の日、誤差多少あり」を基準として収穫することにしました。 2003年の土用の丑の日は、太陰暦だと6月28日、太陽暦だと7月27日です。 実際の採集は、7月26日に行いました。



平成15年7月26日 草刈り風景


○○駅に集合

浅川に到着

牛革草探索中

第一発見!

これが牛革草だよ

こども達も参加してくれました

第二発見!

群生も発見!

牛革草の群生

みんなで草刈り

これかな?

帽子の男性が山田助教授です

後の3人は東薬少年隊?

全草を使用します

牛革草です



ちなみに、1860年の土用の丑の日は7/20と8/1の二回です。 太陽暦の7/20は、太陰暦だと1860年((安政7)万延1)[庚申] 6月3日、8/1は6月15日になります。 逆に太陰暦の7/20は9月5日、8/1は9月15日です。

参考

土用とは土旺用事の略で、季節を五行説割り振りで決めた際(五行は万物の元となるもの。水、木、火、金、土。割り振りは、冬は水、春は木、夏は火、秋は金です)余った「土」の支配する時期として各季節の末18日ないし19日間を土の時期にしたもの。現在は、ほぼ夏の土用のみを土用と言います。
その土用の18日か19日の間に、子丑寅・・・酉犬猪で12日に一度くる「丑の日」が必ず入ります。 二度入ることもあります。(したがって、丑の日「一日限定」での収穫説はあまり意味がないと思われます)
丑の日にウナギを食べる習慣を一般化したのは幕末のスーパープロモーター平賀源内。 夏場にウナギが売れないとうなぎ屋に相談をうけて、「本日丑の日」の張り紙を張り出して大繁盛・・・という逸話が残っています。(どこまで本当かは謎ですが、もともと土用に精力のつくものを食べる習慣は、それなりに各地にあったようです)
この「土用の丑の日、うなぎの日」が誕生したのが1700年代中頃?にです。牛額草の収穫日の設定に、なんらかの影響があったかもしれません。

平賀源内といえばエレキテルや鉱山開発が有名ですが、博覧会の先駆けといわれる「全国薬品会」の開催や、薬品分類実学書「物類品隲(ぶつるいひんしつ)の出版などで、クスリの歴史に欠かせない人物でもあります。


~草のある場所~

ミゾソバは、本来「富栄養」な場所である水田やその周辺の水湿地に群生して生息繁殖します。 地下水位の低い場所ほど繁殖します。 水位があって流れのある川には、ほとんど繁殖しません。 「貧栄養」、水が綺麗で流れのいい場所には、生えていない、あるいは子孫を残しにくいということです。
実際、浅川でも、流れの緩やかな場所や、中洲、側溝などに群生していました。 護岸工事の行われた流れのよい場所には、あまりみうけられませんでした。 (かつて土方歳三が牛額草を採取した、石田村周辺も、護岸工事後でしたので、今回の採取は少し上流で行うことになりました。工事前は、石田村周辺にも群生していました)



~とりかた~

根っこから、するすると引っこ抜けます。 全草を用いますから、根は後で切除しなければなりません。
翌年も採集することを考えたら、この方法はお勧めではありません。



平成15年7月26日 草刈りのあと


東京薬科大学へ

重さを計りました

全草を洗います

新聞紙を並べ

その上に洗った牛革草を

牛革草です

牛の顔に似てます?

乾燥します


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