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検証 本当に、無効無害という調査結果 が出たのか、調べてみました。

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昭和23年は粗製濫造医薬品の氾濫に対して規制が行われた年でもあります。
対象とされていた薬品はビタミン剤をはじめとした数十種類ですが、その中には民間薬は含まれていませんでした。
薬事法(旧法)の改正は昭和23年(法145)です。
(ちなみに現在の薬事法は昭和35年8月に成立(法145)し、十回以上改正されています))
旧薬事法の骨子は、医薬品製造業や薬局などの登録制度・薬剤師国家試験や薬事審議会の開始です。
旧法全文へリンク

国会図書館所蔵の薬事業界紙「薬事日報」昭和23~昭和24年分を調査してみました。
すると「国が無効無害という『調査』をしたというのは誤りである」という事実が浮かび上がってきました。
まずは昭和24年6月21日付けの記事。

「黒焼きは・・・・・医薬品ではない      当局方針を明示」

十七日衛生部長会議の席上一丁田製薬課長は、黒焼類は医薬品として認めない方針であると次のように語った。 従来黒焼の類は登録すべき医薬品として解されていなかったところが、新薬事法施行に伴い医薬品の定義の解釈上これを新医薬品として製造許可を申請するものが出てきた。厚生省としては一般に黒焼は医学薬学上その効能効果があるとは考えられないので、医薬品として認めない方針であり一般商品として取り扱うものであるから申請書は返戻(へんれい)した。

この「医学薬学上効能効果があると考えられない」という根拠からの「黒焼申請を認めない」方針を受けて、二ヶ月後の昭和24年8月20日付け記事。

「黒焼等の取締     厚生省が指示」
既に厚生省では黒焼等古来からの俗間薬は医学薬学上の的確な効能を認められないので医薬品としては許可しない方針を明示していたが、このほど監視課ではこれら俗間薬が疾病の治癒軽減、予防等に効能ある旨を表示したり広告して製造販売するものは薬事法違反であるから厳(おごそか)に取締るよう、十三日付け薬発第一四三九号局長通牒で地方庁に指示した。

十三日付薬発第一四三九号局長通 牒

「一般商品として扱う」と言っていたのですが、二ヶ月たって、規制が厳しくなりました。効能効果があるとして製造販売すると、薬事法違反になることが新たにわかりました。
今で言えば、いわゆる健康食品に限らず、「○○テレビで目にいいと言っていたブルーベリーをひとつ200円!」という売り方をしたら、薬事法違反になるようなものでしょうか。
この通牒に黒焼業者がおとなしく従ったかというと、そうでもありません。
一ヶ月後、昭和24年9月22日付けの記事。

「医薬品として 黒焼は認められない     科学的の研究を欠く  厚生省重ねて通 牒
黒焼類の製造に関しては屡々(しばしば)厚生省当局から医薬品として認めない旨を明示しているが、依然として公定書外医薬品としての製造業許可申請を提出するものがあり現行薬事法の施行以来これが数十件にも及んだので、薬務局では十四日更に発薬第一一八号通牒を発して医薬品としての黒焼はあり得ない旨各知事宛指示した。

この黒焼というのは所謂(いわゆる)黒焼、蒸焼き、電気焼き等を総称しこれらを単味で用いるもの、有効成分とする製剤全てに亘って(わたって)いるが、医薬品として申請してくる場合の内容はいずれも民間伝承の効能等であり、成分本質効能に関する客観性のある科学的調査研究がなされていないので、当局としては、これらの基本的要件がととのえられるまでは医薬品としての審査の対象になし得ないとの見解から重ねて今回の通
牒を発したものである。

十四日付薬発第一一八号通 牒

黒焼業者は、通牒に左右されずに申請を続けたようです。
それに対しして、厚生省は、客観性のある科学的調査研究の方法論が確立していないにもかかわらず、随分と強引に門前払いしたようです。
これらの記事で、「国が無効無害という『調査』をしたというのは誤りである」のがわかります。
国は『調査』した結果として『無効無害』としたわけではなく、『黒焼きは全て効能効果を認めない』という方針によって、製法に黒焼の手順がはいる全ての民間薬を『薬事法違反』としてはねつけた のです。
薬事法違反による罰則は、旧薬事法にあるとおり、なかなかに厳しいものです。
31条・34条1.2・44条2.3の違反で、3年以下の懲役刑又は3万円以下の罰金です。(→旧法全文へリンク
当時の3万円は、今で言えば数百万円の価値があると考えればわかりやすいでしょうか。
製造・販売・宣伝をしたら即逮捕されてしまうので、作るのをやめてしまうのも仕方ないことでしょう。
そのうえ、当時は成分分析機器も方法もありませんでしたから、「有効成分を科学的に立証するまでは認めない」と国から通 達されても、簡単には立証のしようがなかったのです。

追記
『当時の担当官庁から「効果のある別の成分を混ぜれば、販売を続けてもいい」旨の通達があった』というのは、『成分本質効能に関する客観性のある科学的調査研究がなされていないので、当局としては、これらの基本的要件がととのえられるまでは医薬品としての審査の対象になし得ない』という通達の拡大解釈【効果があると客観的に証明されているものが入っているのならば、基本的要件が整えられる】ということでしょうか。
処方改造を繰り返して生き延びた伝承ブランド薬(製品名はほとんど変えずに、薬効をがらりと変えてしまったもの)も、世の中には実際に存在していますので、あながち間違ってはいないようですが…。

参考
薬事法改正に伴って、行政は黒焼きも含めて医薬品として考えていたことを示す記事も見つけました。
昭和23年11月13日付け記事より

登録事項等協議  大阪医薬業連支部長会を開催
大阪市医薬業連合会では十一月九日午後二時から小松原町社会党会館にて支部長会議を開催、乾会長はじめ浅川、小山両副会長等各役員並びに支部長、三十余名出席、浅川副会長の司会で乾会長の挨拶、上田顧問並びに先田相談役からそれぞれ西部薬種商業協同組合の運営状態について報告あり、次いで小山常任理事から
一、黒焼製造業許可申請の件
   について説明
 一、昭和二十四年度麻薬取扱免許に関する件
 一、医薬品(殺虫剤・蚊取り線香等)販売登録申請斡旋の件
   について谷山副会長よりそれぞれ説明、登録申請については小間物、荒物等の組合いより連絡のない業者は連合会にて斡旋するから支部長に連絡するよう要望
 一、企業整備によって一時廃業せるものにして再開希望者の新規登録に就て
   乾会長から説明、希望者は支部長より十五日までに連絡することに決定、更に
 一、大阪医薬品協組の経過報告
   に関して九月以来の経過を詳細に報告し午後四時半閉会した。

昭和23年12月16日付け薬事日報記事より

黒焼業者等へ  薬事法講習   大阪医薬業連
大阪医薬業連合会では12月九日午後一時から小松原町社会党会館二階で元薬種商、講習会終了の開業希望者及び黒焼業者に対する薬事法の説明会を開催。
   府薬務課より西田、佐々木、白水、中村、奥村、久保、金田各技師臨席、
   連合会より乾会長はじめ各役員、各黒焼業者及び復活希望者等百二十余名出席
佐々木、金田両技師から
 一、医薬品(黒焼)製造登録申請について
工場設備、表示等種々説明
復活希望者に対しては
 一、薬事法規の説明
を西田技師より一時間余り詳細に説明した後、白木(注:白木あるいは白水。)、奥山両技師より店鋪の企画開業についての心得をそれぞれ説明、質疑応答があって午後五時半閉会した。

講習会まで開催して申請の方法を説明したにもかかわらず、申請された後は一転して医薬品として認めないという姿勢をとったことになります。

どうしてそうなったkといえば、昭和23年12月17日の建議があったから、のような気がします。
昭和23年12月23日付け記事より

公定書外医薬品の製造許可基準  薬事委員会から建議
薬事法第二十六条第三項の規定によって厚生大臣が行う公定書外医薬品の製造許可については、毎月五百件以上も許可申請がありその個々について厚生大臣が薬事委員会の建議を求めることは、到底その繁に堪えないものがあるので、これを一括した許可基準により許可を与えられたいと、十七日の薬事委員会常任委員会は、左の建議を厚生大臣に提出することを可決した。
薬事法第二十六条第三項についての建議
薬事法第二十六条第三項の規定によって厚生大臣が行う公定書に収められていない医薬品の製造許可について、その医薬品が左の各号の一に該当する場合においては、厚生大臣は同法第四項の規定に基づく薬事委員会の建議は、之を個々に求めることなく許可を与えられたい。
(一)公定書医薬品を主な有効成分とする製剤で、従来之に類するものが存在し、効能その他の内容が適当なもの
(二)主な有効成分が既往に許可を受けた公定書外医薬品より成る製剤であって、従来之に類するものが存在し、効能その他の内容が適当なもの
(三)有効成分が公定書医薬品及び既往に許可を受けた公定書外医薬品より成る製剤であって、従来之に類するものが存在し、効能その他の内容が適当なもの
(四)薬事法に基いてその内容についての基準が定められているもの

この建議は、「いちいち調査回答するのは大変なので」「有効成分がはっきりしているものについては、全て許可をください」という趣旨のものです。
黒焼きを全て認めない、という方向転換は、この「いちいち調査回答するのは大変なので」という考え方の延長線上にあるような気がします。


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