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今は昔 売薬歴史シリーズ 7

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~ タムシチンキ ~


前号に引き続き、今も根強く人気の続く伝統薬の“今と昔の姿とその良さ”を伝えるシリーズその七、今回も前回に引き続き外用薬の『タムシチンキ』を御紹介いたします。


◎『小林 タムシチンキ』 = 〖小林 タムシチンキb〗

  • 今回御紹介します伝統薬は商品にユニークな名前をつけることで有名な小林製薬の『小林 タムシチンキ』です。
  • 同社の設立は明治19年(1886年)に創業者の小林忠兵衛が名古屋に前身の雑貨・化粧品・洋酒を商う[小林盛大堂]を開業したことにはじまります。
    その2年後には薬品卸部門を設立、明治27年(1894年)にはさらに自家売薬部門を設立しこの『小林 タムシチンキ』などの10種類の自家売薬の販売をはじめました。
    ということは〖小林 タムシチンキ〗は115年もの歴史を持つ立派な伝統薬ということになります。 大正8年(1919年)には同社は大坂に進出し本社[小林大薬房]を設置、その後1940年には製剤部門を分離して[小林製薬株式会社]を設立しましたが、昭和31年(1956年)には[小林大薬房]と[小林製薬]を合併、改組し社名を[小林製薬]に改称しました。
    昭和41年(1966年)には肩凝り薬「アンメルツ」を発売、その後“今までになかったものを作る”“あったらいいなをカタチにする。”ことをモットーに、その商品が何かを消費者に伝えるため“覚えやすくリスム感があり1秒でわかる”商品名の製品を次々に生み出してきました。
    例えばごく一部を御紹介しますと、「アイボン」「タムチンキ」「サカムケア」「のどぬ~る」「イージーファイバー」「ブレスケア」「タフデント」「タフグリップ」「熱さまシート」「トイレその後に」「消臭元」「無香空間」「トイレ洗浄中」「ケシミン」などなど他にも多くのユニークなネーミングの商品があります。
    ということは今回御紹介の『小林 タムシチンキ』は同社の製品開発、命名の流れの源流、ハシリ、記念碑的な商品と言えそうです。
  • 近年皮膚真菌症に用いる薬の進歩はめざましく白癬やカンジダにも有効で刺激が少なく一日1回の塗布でも効果のある薬剤が次々と開発されています。
    この〖小林 タムシチンキ〗も従来のサリチル酸などの成分に加えてイミダゾール系の抗真菌薬のミコナゾール(MCZ)〔;医療用でMCZを含有する製品には「フロリード」があります。〕を1%含有しています。

  • では『小林 タムシチンキ』コレクションをご覧下さい。
    (推測される年代順です。)
(1)『小林 タムシチンキ』
:戦前~終戦直後にかけての製品。
 ウヰスキーのミニチュアボトルを彷彿とさせるような重厚な陶器入りの製品で外箱横面にはハングル文字が書いてあります。
 適應症には
 “たむし・いんきん・水虫・ひぜん・銭がさ・雁がさ・糸かせ・白禿(しらくも)・あせも・なまず・その他皮膚諸症”
 とあり、“患部の周囲より段々中へ中へと塗るべし”と書かれています。
小林 タムシチンキ
(2)『小林 タムシチンキ』
:価格は30ccで金100圓
小林 タムシチンキ
(3)『小林 タムシチンキ』

小林 タムシチンキ
(3)『小林 タムシチンキ』
:価格は25ccで金50圓
 主治効能には
 “たむし・水虫・インキンたむし・ぜにたむし・にきび・なまず・しらくも・はたけ・
 がんかさ・つばめかさ・くさ・ひげくさ・げじげじ・しつひぜん・糸かせ・かゆがり・
 あせも・とびひ・ようばいそう・づそう・サメハダ・カハムケ・ワキガ・悪臭の汗足、
 男女とも毒深くして顔手足総身に何となくボロボロ発瘡するなど、蜂・南京虫・家ダニ・ぶと(ぶよ)
 外一切の毒虫に刺されたる場合・又はハバキ・ヒビ・シモヤケ等に効を奏す・其他皮膚病に効あり”

 と、現代ではよく判らない、また使われなくなった病名を含めてありとあらゆる効き目が書かれています。
小林 タムシチンキ
(5)『小林 タムシチンキ』
:最近の商品に近い形状の『タムシチンキ』
 この頃から特異な形状のブラシが
 付属しはじめたものと思われます。
小林 タムシチンキ
(6)最近の『小林 タムシチンキ』
:ミコナゾール(MCZ)はまだ含有されていません。
 効能・効果は
 “みずむし、いんきんたむし、ぜにたむし”
 と簡素になっています。
小林 タムシチンキ
(6)現代の『小林 タムシチンキ』
:ミコナゾール(MCZ)を含有しています。
小林 タムシチンキ



〔参考文献〕
・インターネット  Wikipedia
・インターネット  小林製薬株式会社HP

〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局  荻野 祥子 先生


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