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薬と歴史シリーズ 8

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~ 軍隊と薬、征露丸 ~


前回の本シリーズ(その7)では旧日本軍の薬などをご紹介しましたが、今回はその続きとして代表的軍隊薬であり、かつ現在も良く使われている正露丸(征露丸)に関連するいくつかのコレクションを取 り上げてみました。

【正露丸(征露丸)】

ご存じ正露丸に関しては、庶民文化研究家・コレクターの町田忍氏の詳細な研究があり、その著書『マッカーサーと征露丸』(芸文社 ¥1,854)に詳しく書かれており、また氏が最近書かれた『昭和レトロ商店街』(早川書房 2006.1.20.初版 ¥1,600+税)でも紹介されていますので、正露丸(征露丸)についてもっと知りたい先生は3,534円持ってぜひ書店に行って下さい。

また最近の薬事日報〔2006(平成18)年1月1日号〕でも旧陸軍の医療①と題した記事の中で正露丸(征露丸)について紹介がされていますので参考にして下さい。

そこで正露丸(征露丸)についてのポイントを幾つか列記して正露丸(征露丸)に対する正しい認識の吐露とします。
  • その成分のクレオソートは明治36年(1903年)に陸軍軍医学校の教官が偶然発見したもの。
  • クレオソートは主にブナ属の植物からタールを蒸留して抽出した油状の成分。
  • 本来は脚気の予防を期待して、またチフスや赤痢に対する効果、つまりは水あたり、消化器系伝染病の予防薬として陸軍で日露戦争(1904~05)中多用される。 (日露戦争における脚気患者は16万人。死亡者は約2万7,800人。チフスや赤痢、感冒を含めた総疫病者数は22万1136人。一方戦死・戦傷者は21万8429人で戦死・戦傷者数の方が少ない。)
  • 当初はその特異な臭気、味のため兵士に不評であったが、明治天皇陛下のおぼしめしの薬(御神薬)であるとしてからは絶対的信頼を得る。 (戦時中700万缶・5億60000万粒も製造される。)
  • 日露戦争後その神薬、霊薬としての神秘的効果が世間一般にも知れわたり戦役後陸軍はパテントを民間に分け与え、民間でも数十社で製造、販売されるようになる。
  • 陸軍においてはクレオソート(ケレオソート)丸、民間では征露丸(露西亜を征伐する ・・・)の名称で普及。
  • 第二次大戦後「征露丸」の名称は敗戦国の弱さゆえ、「正露丸」と改姓。
  • 現代でも正露丸(征露丸)を名乗るクレオソート丸は32種類の多きにわたる。(征露を名乗るセイロ丸も1社現存。)
  • 数十社で製造、販売したことから“正露丸”“征露丸”の名称は商標登録・商標権の対象として度々訴訟、争いとなる。 (昭和49年最高裁の判決で“正露丸”は普通名詞、自由使用を認める判決が下されるも、最近になってラッパのマーク(大幸薬品)とひょうたんマーク(和泉薬品)の間で争いが再発した模様。)
では収蔵品の中から“征露丸”“正露丸”コレクションをご覧下さい。

☆「クレオソート丸」(陸軍衛生材料本廠)×2
クレオソート丸クレオソート丸
☆日露記念「軍征丸」
日露記念「軍征丸」

☆「忠勇丸」(日露戦役記念 元祖征露 発売元 日本忠勇團)
忠勇丸 忠勇丸
日本忠勇團が作っていた軟膏「軍隊傷薬」

☆「戦友丸」(元名征露丸 戦捷記念 日露戦役記念薬 帝國戦友相愛會)
戦友丸 戦友丸
戦友丸
☆「戦友丸」(昔の征露丸)
軍人膏
同社が作っていた軟膏
「軍人膏」

☆「征露丸」
征露丸征露丸

☆「中島“征露丸”」大型木箱
  :印紙で封印していることから 大正15年(1926年)以前の製品と推測。
中島“征露丸” 中島“征露丸”
☆「中島“征露丸”」ビン大小

☆忠勇征露丸
忠勇征露丸
☆「中島 正露丸」琺瑯看板
中島 正露丸
☆「中島 忠勇 征露丸」広告
 :肺病(結核・肺炎…)
にも効果あり!!
中島 忠勇 征露丸
☆「中島 忠勇 征露丸」おまけ
 :トブホドウレル→→
  飛行機のおまけ
中島 忠勇 征露丸

☆「国民正露丸」
国民正露丸
☆セイロ丸
セイロ丸
☆セイロ丸
セイロ丸
☆「セイロ丸納書」
セイロ丸納書

国民正露丸




☆「正露丸ストラップ」



〔参考文献〕
・『マッカーサーと正露丸』町田 忍 (芸文社)
・『昭和レトロ商店街』  町田 忍 (早川書房)
・『薬事日報〔2006(平成18)年1月1日号〕』



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